ペーチンは、10年ほど京都に住んでいました。

ある夏の夜。
あまりの蒸し暑さに、夫のキラさんと、涼を求めて車を走らせました。

そう言えば、お友達が、貴船川でも蛍が見られるよ、って言っていたことを思い出して。
京の奥座敷、貴船神社へ。

今思えば、蛍を見るには日没直後。

夕飯をすませてから家を出たので、日没をとうに過ぎ、夜も更けていたので、蛍観賞に適した時間ではありません。

鞍馬の山は、木々が鬱蒼とし、貴船へ向かう道は、どんどん細くなり。
参道の店の明かりも落ちて。
真っ暗な、貴船神社。
夜の貴船神社

到着し、奥社の前に車を停めて、一旦、外へ出てみます。

側を流れる清流、貴船川は、上流で雨が降ったのか、ドウドウと水が流れています。
蛍は、いません。

お社は、真っ暗。
目を凝らしても見えない黒。
さすがに、夜の参拝はせず。
蒸し暑さの中にも、冷んやりとした風。

「 キラさん、帰ろうよ!! 」
怖くなった私は、すぐに、車に乗り込みました。

キラさんは………。
カチ、カチッ!
タバコに火をつけました。

瞬間的に私は、ダメだ!と察知。
「 キラさん、この場所で吸っていけないから。
はやく、車に戻って!! 」

ただならない私の口調に、慌ててタバコを消しました。
車に乗り込み、しばらく、黙って道を走らせます。

明るい街中へ、出てきてから、コンビニに寄るよう頼みます。

私は、ナース。

先輩から、何かあったとき(例えば、患者さんの急変や死後の処置をさせて頂いた時など)は、すぐに家に帰らず、一旦、ドアのある店などに寄り道をして帰るよう、教えられていたから、コンビニを目指します。
霊が、そのまま、家についてこないように。
一度、寄り道。

明るいコンビニの店内で、やっと、私はキラさんに話せました。
動悸が、とまりませんでした。

あの神域で、火を点けるなんて、喫煙なんて、もってのほか。
すべてが静まり、休んでいる夜の時間。
人のおうちやお庭に、夜、勝手にお邪魔して、騒いだりタバコを吸ったりすれば、誰でも怒る。
それも、神様の休んでおられる場所で。

危なかったよ!

キラさんの立っていた場所から、川を挟んだ、鬱蒼とした木々の頭上に、
『 緑色の大きな目 』のようなものが、見えていたんだよ!って。

霊感も超能力も、微塵もない私が、見えるなんて……
貴船神社恐るべしです。
震え上がりました。
さすがに反省し、後日、謝りに参拝しました。

夜に、神社へ行ってはいけません。

貴船神社